作品紹介
動画出典:フジテレビ番組動画
作品情報
四畳半神話大系
監督:
・湯浅政明
制作:
・マッドハウス
声の出演:
・浅沼晋太郎(私)
・吉野裕行(小津)
・坂本真綾(明石さん)
・藤原啓治(樋口清太郎)
・甲斐田裕子(羽貫涼子)
放送局:
・フジテレビ
放映期間:
・2010年4月22日~7月1日
エピソード数:
・全11話
あらすじ
「私」は京都の大学の冴えない3回生。
大学入学を機にサークル活動を通じて「バラ色のキャンパスライフ」を夢見ていたのに、現実は悪友の小津に振り回される始末。
孤高の乙女・明石さんのことが気になるも、無駄に高いプライドと非活動的で社交性の低い性格が邪魔をしてなかなかお近づきになれない。
正体不明の自由人や、酔うと人の顔を嘗め回す歯科衛生士、果ては大学の秘密組織にまで翻弄され、理想からは程遠い鬱屈した日々。
いっそのこと、ぴかぴかの1回生に戻って大学生活をやり直したい!
「私」はサークル選びでどのような選択をするべきであったか。
果たして「バラ色のキャンパスライフ」を手にすることはできるのか。
レビュー
感想
原作小説の筆者である森見登美彦は僕の憧れの一人である。
あの昭和文士のような語り口がたまらないのである。
大学で出会い、その後深く親友を重ねた唯一無二の親友はまさしく森見小説に登場する主人公たちのような、想い人憎からず思っている乙女がいながらも、奥手で強がりで詭弁を弄するようなタイプの愛すべき男であった。
そして私は「早く仙人になりたい」と嘯きながら学内外で暗躍する風采の上がらない男であった。
夜道で出会ったものは私を妖怪か何かと勘違いしたことだろう。
舞台は京都ではなく東京の辺境地ではあったが、そんな彼との唾棄すべき腐れ大学生時代を思い出してしまうのが森見登美彦の原作である。
原作小説への偏愛をこれ以上書き連ねると本編に突入できん。
責任者に問いただす必要がある。責任者はどこか。
四畳半神話大系
閑話休題、アニメ版の話をしよう。
本作は「大学1回生の時にあの選択をしていたら…」を繰り返すifの物語なのだけれど、世界観を損なうことなく選択肢を増やしたのはいい改変だったと思う。
(原作では選択肢が4つだったが、アニメ版では10パターンまでに拡大されている)
本作はそれぞれの選択肢を並行世界として、最終的にこのパラレルワールドを統一させるSF作品なのだが、アニメ版の最終2話も実写とクロスさせる演出によりその違和感が上手く表現されていた。
森見登美彦独特の語り口をそのまま主人公のモノローグに充てるなど、原作へのリスペクトを感じられる作品だ。
また、原作小説の表紙絵を担当している中村佑介のイラストが可愛らしい。
イラストレーションをずっと手掛けてきた縁もあってか、OP曲にASIAN KUNG-FU GENERATIONの曲が採用されているのも良い。
小説のアニメ化、コミック化、実写化には結構うるさい僕だが、これはなかなか。
とは言え、アニメしか観てない人は絶対後悔させないから原作小説是非とも読んでほしい。
そのうち森見登美彦の小説のレビューも書こう。
もっと作品を楽しむために
森見登美彦作品ね、結構アニメ化されてるんですよ。
どれも人気なので映像作品から入門する人も少なくないと思う。
森見登美彦原作のアニメ化作品紹介していくので、気に入ったら小説で読んでくれ!
絶対好きだから!
有頂天家族
動画出典:NIS America
動画出典:「有頂天家族2」公式チャンネル
2013年に、「面白く生きる」ことをモットーとする狸が父の死の真相を知り奮闘する様子を描いた『有頂天家族』がアニメ化、2017年にはその続編もアニメ化された。
『かってに改蔵』『さよなら絶望先生』の久米田康治がキャラクター原案なので、本作とはまた違った印象。
原作小説が三部作なので、続編が上梓された暁にはアニメも制作されることだろう。
ペンギン・ハイウェイ
動画出典:TOHO animation チャンネル
さらに2018年には、小学四年生の主人公が不思議な力を持つ歯科衛生士のお姉さんとの出会いと別れを経て成長するストーリーを描いた『ペンギン・ハイウェイ』が映画化された。
こちらのキャラクターデザインを担当した新井陽次郎はスタジオジブリに所属していたこともあり、どこかジブリっぽい感じも。
原作小説は第31回日本SF大賞受賞。
夜は短し歩けよ乙女
動画出典:TOHO animation チャンネル
後輩の「黒髪の乙女」に恋をする「先輩」の恋物語を描く恋愛ファンタジー。
時系列は前後するが、こちらは2017年にアニメ映画化。
第20回山本周五郎賞を受賞した原作小説では1年の物語であったが、アニメ版では一晩の出来事として改変されている。
アニメだけしか観てない人は『四畳半神話大系』のアニメを観てから観ることを推奨する。
作品中に登場する「学園祭事務局」は元々「図書館警察」だったというセリフから推測するに、時系列的にも『四畳半神話大系』より後の話であると推測できる。
『四畳半神話大系』にも登場する樋口は相変わらず大学8回生なので断定はできないが。
ちなみにこの作品の登場人物は他作品ともリンクしており、高利貸で偽電気ブランの卸元をやっている「李白」や閨房調査団の一員である京料理屋の若旦那「千歳屋」は、『有頂天家族』でそれぞれ「寿老人」と「大黒」と同一人物であるとされている。
他にも作中に原作小説が登場したり、『四畳半神話大系』の登場人物が意外な形で登場したりと、アニメファンへのサービス精神に溢れている。
この作品は2017年にオタワ国際アニメーションフェスティバルで長編部門グランプリを受賞していることもあり、海外でも評価されたようだ。
まぁ、ここまで紹介しておいて言うのもなんだけど、僕は人気タレントの声優起用反対派だし、原作小説への思い入れが強いせいもあってこの作品の評価は結構低かったりするんだが…。