作品紹介
動画出典:KING RECORDS
作品情報
昭和元禄落語心中
監督:
・畠山守
制作:
・スタジオディーン
声の出演:
・関智一(与太郎 / 三代目 有楽亭助六)
・石田彰(菊比古 / 八代目 有楽亭八雲)
・山寺宏一(初太郎 / 二代目 有楽亭助六)
・林原めぐみ(みよ吉)
・小林ゆう(小夏)
放送局:
・TBSテレビ
放映期間:
・第1期:2016年1月9日~4月2日
・第2期:2017年1月7日~3月25日
エピソード数:
・第1期:全13話+OVA2話
・第2期:全12話
あらすじ
落語が絶頂期を終えた昭和50年頃、刑務所を出所した元チンピラ・強次(きょうじ)は慰問で聴いた八代目有楽亭八雲(ゆうらくていやくも)の『死神』にいたく感動し、寄席に押しかけて弟子入りを懇願する。
八雲は弟子を取らない主義であったが、強次を住み込みの付き人として雇い与太郎(よたろう)の名を授けた。
一向に落語を教えてくれようとしない八雲の芸を見、家では落語の資料を聴き漁る与太郎は二代目有楽亭助六(ゆうらくていすけろく)の芸風が気に入り、これを自身の芸に取り入れようと精進する。
共に暮らす八雲の養女・小夏(こなつ)が助六の実娘であることを知り、また落語を好いていることを知る与太郎であったが、彼女が八雲を恨む理由がわからなかった。
そんなある日、八雲の独演会で前座を務めた与太郎は助六の落語を演じるが、練習不足だったため座を白けさせてしまい、更には八雲が演じる中、舞台袖でいびきをかいてしまったことで八雲から破門を言い渡される。
小夏に立ち会ってもらい、必死に復帰を願い出る与太郎に対し、八雲は3つの約束を守るという条件付きで許可を出した。
「できねぇ時?そん時ゃ諸共心中だよ」
レビュー
感想
「伝統芸能」ってさ、もう括弧つきなわけさ。
観ない、聴かない、わからない。
わからないから敷居が高くなる、足が遠のく。
高尚なものとしてそういうプロモーションをしてきた結果かもしれないし、単純に他のエンターテイメントに淘汰されたせいかもしれない。
"文化の寿命"って知ってますか?
解説のいらない大衆文化の寿命は大抵50年って言われてます
それ以降は残ったとしても大衆のものではなくなってしまうんだって雲田はるこ『昭和元禄落語心中』
僕は伝統芸能に特別関係するようなことはやっていないんだけど、三代目助六に自作の新作落語を勧める樋口栄助(ひぐちえいすけ)のセリフは衝撃だった。
考えてみれば「日本が誇る伝統」って芸能に限らず、日本に暮らす僕らも実はよく知らないものばかり。
関係者はどう発展させるか、どう継続していくか日々悩んでいるんだろうなぁ。
そういった意味ではこのアニメ版、落語入門としてこの上ないコンテンツ。
「死神」「芝浜」「野ざらし」「寿限無」「居残り佐平治」「子別れ」「出来心」「反魂香」「鰍沢」「夢金」…
きっと自分の好きな演目が見つかるはず。
今回僕がアニメ版をオススメしたのは単純に音声付きで落語を楽しんで欲しかったからなんだけど、石田彰と山寺宏一の落語がまた良かった!
二人ともオーディションで勝ち取ったんだとか。
最後の「死神」最高でしたね。
相当練習したんだろうなぁ…。
オープニングテーマの『薄ら氷心中』『今際の死神』も作詞作曲・椎名林檎、歌・林原めぐみで雰囲気たっぷり。
動画出典:KING RECORDS
動画出典:KING RECORDS
声優たちの名演もさることながら、本作はシナリオが圧倒的に良かった。
作品全体が一つの大きな落語作品なんじゃないかというほど出来がいい。
作中で演じられる演目が物語とリンクしたり、登場人物にまつわる悲喜こもごもが作品として美しい。
僕はアニメから入ったんだけど、原作マンガもすごく良かったのでこっちも読んでもらいたい。
原作者の雲田はるこは全くの落語初心者の時にこのマンガを描き始めたらしく、巻末に寄席や落語について初心者にもわかりやすい丁寧な説明があるので、実際に寄席に行ってみたいという人の援けになるはず。
もっと作品を楽しむために
ここまで来たらもう一歩踏み出して寄席でも演芸場でも市民ホールでもいいので落語を生で聴いて欲しい!
YouTubeとかで流しっぱなしにしてラジオ的に楽しむのもいいけど、やっぱり会場全体の空気感、演者の身振り手振りあってこその落語というのをひしひしと感じられる。
公益社団法人 落語芸術協会が公演スケジュールや演芸場をまとめてくれているので、興味のある方は是非。
落語全然わからないよ!という人のために入門のための基本情報をざっくり説明。
座布団の上に着物着た人が座って一人で話芸を披露するのが落語。
漫談と違ってオチがあるのが特徴。
「マクラ+本題+落ち(サゲ)」という構成で、本題の説明や自己紹介をする「マクラ」は漫談に含まれることもあるけど、まぁ座布団に座ってたら落語という認識でOK。
同じスタイルで講談ってのもあるけど、こっちは演者の前に釈台という台があるので見ればわかる。
講談の方は歴史ネタが多いんだよね、話しながら台をタタンと叩く。
しかし上方落語では見台(けんだい)という台を置いたりするからややこしい。
落語も三味線などの"ハメモノ"入りの「上方落語」とトークのみの「江戸落語」に分かれたり、江戸時代~大正時代に作られた「古典落語」と大正以降に作られた「新作落語」に大別できるけど、最初の内は気にしなくて平気。
落語で扱う演目を噺(はなし)と言い、滑稽噺、人情噺、芝居噺、怪談噺、音曲噺などに分類できる。
落語のもとは「落とし話」と言って滑稽噺が多かったみたい。
落ちの種類が多くて自分の好きなパターン見つけられるとハマれるので、ここに注目するのオススメ。
・ダジャレで落とす"地口落ち(にわか落ち)"
・調子よく話が進む"拍子落ち"
・立場が入れ替わる"逆さ落ち"
・意味が分かるとじわじわ笑える"考え落ち"
・話の最初に戻る"まわり落ち"
・意表を突いた終わり方の"見立て落ち"
・間抜けなことを言う"間抜け落ち"
・決め台詞で終わる"とたん落ち"
・全く関係ないことで終わる"ぶっつけ落ち"
・身振りで結末を匂わせる"しぐさ落ち"
・「冗談言っちゃいけねぇ」で切り上げる"冗談落ち"
各演目のあらすじを知りたい人は先に本で予習しておくのもいいかも。
この本が役になったのでオススメ。
補足
2018年10月にNHKで実写ドラマ化。
八雲役を岡田将生が、助六を山崎育三郎が演じた。
例によって私は実写版は視聴予定なので紹介のみ。
動画出典:NHKエンタープライズ ファミリー倶楽部