【小説】ピーター・トライアス『メカ・サムライ・エンパイア』
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作品紹介

JACK
ロボットはロマンで動いているのだ。

作品情報

メカ・サムライ・エンパイア
(原題:Mecha Samurai Empire)

著者:
・Peter Tieryas(ピーター・トライアス)

翻訳:
・中原尚哉

出版:
・2018年、ハヤカワ文庫SFと新☆ハヤカワ・SF・シリーズより同時刊行&日本先行発売
・原著は2018年、Ace

あらすじ

第二次世界大戦で日本とドイツが勝利し、アメリカは日本とドイツによって分割統治されていた。

西海岸が「USJ(日本合衆国)」として大日本帝国統治下におかれてから50年程経過した1994年、カリフォルニア州で育った不二本誠(ふじもとまこと:愛称「マック」)は皇国機甲軍の巨大ロボット「メカ」のパイロットに憧れ、士官学校の機甲科合格を目指し奮闘する。

成績優秀とは言い難いマックはシミュレータゲーム仲間の菊池秀記(きくちひでき)や日独ハーフの留学生グリゼルダと共に学生生活を過ごしていたが、試験当日トラブルに巻き込まれ、更に軍部より派遣された試験官の嫌がらせにより思い通りの結果が残せない。

失望するマックだったが、アメリカ国民解放組織「NARA」のテロ攻撃に偶然居合わせ、エリート同級生の橘範子(たちばなのりこ)と共にこれを撃退した功績から民間の警備メカパイロット訓練性に推薦される。

決して楽な道ではなかったが、マックはこれに再び夢への希望を見出し挑戦の意を新たにする。

レビュー

感想

JACK
これは是非とも映画化(アニメ化でもいいかもしれん)して欲しい。

 
ジャパネスクなサイバーパンクSFで青春ロボットバトルものかと思いきや、大日本帝国とナチスドイツの睨み合いやその背後に描かれる国家と個人の関係が緊張感を高め、物語は複層的に入り組んでいく。

後半に進むに連れ、疾走感が増してあっという間に読み終わってしまった。

海外作品って翻訳が結構世界観を左右したりするんだけど、これは文句なし。

特にライバルの久地樂(くじら)を関西弁にしたのなんか最高。

ロボットバトルのシーンも文章を読んでいるはずなのに脳内に映像で再現されるくらい。

表紙のイラストのおかげもあるかもしれんが。

これを手掛けたコンセプト・アーティスト、John Wallin Liberto(ジョン・ワリン・リベルト)のポートフォリオもめちゃくちゃ恰好いいので必見。

JACK
コンセプトアート描ける人尊敬しちゃうなぁ…。絵だけで世界の説明ができるの本当に凄い。

 

筆者本人による作品紹介動画でも語っている通り、本作は日本のゲームから多大な影響を受けている。

カニ型ロボットなんてまんまタチコマ(『攻殻機動隊』)だし。

兵士が駒として都合よく扱われるあの無常感は小島秀夫『メタルギア』シリーズだったか。

動画内で持っているゲームがMGS2なのが渋い。

しっかりテーマに沿った「ミーム」を受け継いでいる。

 

動画出典:TieryasXu

もっと詳しく
『メカ・サムライ・エンパイア』日本先行発売のニュース記事。上記動画の内容を日本語でまとめてくれている。

もっと作品を楽しむために

本作だけで完結して楽しめるので、敢えてここまで書かなかったんだけれど、実は本作、シリーズ2作目である。

前作『ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン』(原題:United States of Japan)はPhilip Kindred Dick(フィリップ・K・ディック)の歴史改変SF小説『高い城の男』(原題:The Man in the High Castle)をオマージュし、アジアと日本側に焦点をあてた精神的続篇として生み出された作品で、本作の10年前、1984年のUSJを舞台に、アイデンティティーの探索やプロパガンダへの抵抗が描かれたディストピア小説となっている。

第48回星雲賞で海外長編部門(小説)を受賞。

1作目の表紙も恰好いいメカのイラストだが、メカによるバトルシーンはほとんど描かれないので期待しないように。

本作を読んだ後で、世界観や背景理解を深めるために前作を参照する読み方でもいいかも。

『ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン』を気に入った人には『高い城の男』も読んで欲しいけど、やや読みづらいので注意。

「精神的続編」と言うだけあって、設定にいくつか共通点が散見する。

Amazonオリジナルでドラマが制作され、Amazonプライム・ビデオ会員なら見放題なのでこちらを観るのもいいかも。

レビューを見る限りでは原作通りではない箇所が多いようだが(私は未視聴)。

JACK
『高い城の男』読んだけどあんまり入り込めなかったので、そのうち映像で復習する。

 

動画出典:Amazon Prime Video

もっと詳しく
『ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン』刊行時にcakesに掲載されたものの再録。著者へのインタビュー。

 

2019/04/24追記

次回作の発表ありましたね。

タイトルは『サイバー・ショーグン・レボリューション』。

20年後の世界に本作の登場人物らが生きていたとしたら結構な重役になっているのでは。

JACK
次作にも期待!
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