作品紹介
作品情報
RADIANT
作者:
・Tony Valente(トニー・ヴァレント)
出版社:
・Ankama Éditions
・日本ではユーロマンガ合同会社/飛鳥新社
発売:
・2013年~(フランス)
・2015年~(日本)
既刊:
・13巻
あらすじ
周りを雲海に囲まれた空中群、ファレノスにどこからともなく現れ、全てを破壊し尽くす怪物「ネメシス」。
これを唯一倒すことができるのが、「ファンタジア」と呼ばれる魔法を扱えることのできる魔法使いであったが、同様に彼らは「感染者」として人々から恐れられ、迫害される境遇にあった。
女魔法使いアルマの下で見習い修業を続ける少年セトは一人前の魔法使いとなることを夢見ていた。
アルマと共に空に浮かぶ観測船で暮らし、本物のネメシスを目にしたことのないセトは町に降りる度に勘違いして騒動を起こしていた。
そんなある日、セトはネメシスの卵が空から落ちてきたのを目撃し、自分の手柄を立てるために自らネメシスを目覚めさせてしまう。
その場に居合わせた別の感染者たちに悪事を唆されながらも、何とかネメシスを倒すことに成功したセトは、場当たり的なネメシス退治は根本的な問題解決にならないことに気づき、ネメシスの巣があるとされる伝説の地「ラディアン」を探し当て、これを破壊することを決意する。
アルマの下を離れたセトは、ネメシスの死骸の回収に来た魔法使いの研究者ドクに同行し、ラディアン探しの旅に出る。
その道中、通りかかった異端審問官に捕らえられていた魔法使いの少女メリを助けたセトは、ドクと共に魔法使いが身を寄せ合って暮らすアルテミス魔法学院に向かい、アルマの知り合いである老魔法使いヤガの下で修業に取り組むのであった。
レビュー
感想
あぁ、マンガの新しい時代が来るぞ…!
「『ワンパンマン』の村田雄介先生推薦!」という帯と表紙の綺麗さに惹かれて購入し、第1巻を読み終わった後素直にそう感じた。
フランス語圏の漫画って、小学校の頃に図書室で読んだHergé(エルジェ)の"Les Aventures de Tintin"(『タンタンの冒険』)からアップデートできてなかったけど、ちょっとこれは海外の漫画作品勉強しないとだ…。
日本のマンガ風にデフォルメされたリアクション・表情、効果線やアルファベットの書き文字、大胆なコマ割り、背景やモブキャラの丁寧な書き込み…
キャラクターデザインもかわいいし、ストーリー展開もやや唐突だが悪くない。
いやぁ、それにしてもこれ一人で描いてるってのが本当に衝撃。
絵のタッチやストーリー展開はbande dessinée(バンド・デシネ)でもアメコミでもない、韓国のWEBTOONとも違う、「日本のマンガ」の正当後継といった感じ。
ちょっと調べてみたけど、フランス語オリジナルで描かれた日本風漫画って、既に向こうでは主流ではないにせよかなり市民権を得ていて、"Manfra"(マンフラ)とか"Franga"(フランガ)と言われるらしい。
読み始めは冒険ファンタジー、王道少年漫画かと思いきや巻を重ねるに連れ、差別や移民排斥運動などのテーマを盛り込んできており、意外と社会派な一面も。
キャラクター同士の掛け合いはおそらくフランス流なんだろうなぁ。
時々小さな違和感があるが、まぁそこは大して気にならない程度。
大体4か月に一巻の発刊ペースだが、時々置いて行かれるので一気読み推奨。
特に巻が若いうちは一コマあたりの情報量が多く、慣れない内は読みづらいかも。
もっと作品を楽しむために
NHK Eテレにて2018年10月6日からアニメ放送がスタート。
第2期が2020年2月26日までやってたみたいね、続編来るか?
日本のマンガ文化がフランスのそれと融合して、フランス人が描いた作品を日本の国営テレビがアニメ化して、っていい文化交流だよなぁ。
こうやってどんどん混ざり合って高次元な作品がもっとたくさん生まれるといいよね。
フランスでは毎年ジャパン・エキスポも大盛況みたいだし、今後もこういう作品がどんどん出てくるかも。
原作者のトニーとアニメ制作チームの対談動画を見つけたので併せて紹介。
ダイジェスト版だから情報量少な目だけど、アニメ化にかける情熱とこだわりが十分伝わるのでアニメ版のファンにオススメ。
補足
原作者のトニーとアニメ制作チームの対談の中でもちらっと登場したエンディングテーマについて補足。
ポルカドットスティングレイが原作同様の「ラディアン」というタイトルで書きおろしているのだけれど、おそらく原作タイトルとちょっとニュアンスが違う。
"radiant"はフランス語では「~を抹消する」を意味する"radier"の現在分詞形だから「~を抹消している」(英語だと-ingね)の意味になる。
一方でエンディングテーマ方は歌詞を読む限り、おそらく英語の「光[熱]を放つ、輝く」の意味で使われているっぽい。