作品紹介
作品情報
BLUE GIANT
作者:
・石塚真一
連載誌:
・ビッグコミック
連載期間:
・2013年~2016年
既刊:
・全10巻/完結
あらすじ
宮城県仙台市に住む宮本大(みやもとだい)は、中学生の時に友人に連れられて聴いたジャズの生演奏に感激して以来、独り広瀬川の土手でテナーサックスの練習に明け暮れていた。
「世界一のジャズプレイヤーになる」という夢を持っていた大は、高校三年生の夏バスケ部最後の大会に負けたことをきっかけにサックスの練習に本格的に取り組み始める。
楽譜すら読めないながらも毎日自己流で練習を続けていた大だったが、ある日彼の熱意に魅力を感じた馴染みの楽器屋の店長、小熊の計らいでジャズバー「バード」で初ライブを行うことに。
聴衆の前で行う初めてのライブセッションで、大は意気込みすぎてソロパート中に和を乱す大音量を出してしまい、常連客の一人に「うるさいんだよ!」と一喝されてしまう。
客からはクレームが入った大の演奏だったが、「バード」のマスター、川西はそこに才能のかけらを見出し、元ジャズ奏者の由井を紹介する。
由井との簡単なセッションを経て、大は由井のもとでジャズの基礎知識・技術を身に付けるための特訓に打ち込むことになった。
特訓を重ね、上達を実感する大は自身が通う高校の学園祭で音楽教師の黒木と組んでライブに参加する。
ロックバンドばかりが出演する中演奏したジャズは大盛況の内に幕を閉じた。
このライブ成功の報告を受けた由井は、再び「バード」でバンドと合わせて演奏することを大に命じる。
初ライブで演奏を酷評した常連にも実力を認められた大は、世界一のジャズプレイヤーになるために地元を離れ東京に出ることを決意するのであった。
レビュー
感想
ZAZを紹介してくれた後輩と、中学高校時代の同級生の2人から強く薦められて購入。
(ZAZ "Champs Élysées"の記事は以下参照)
曰く「いい人しか出ない」「泣ける」「俺が2冊買ってやるから良かったら続き買え」とのこと。
「えー、そんなに薦めて大丈夫なのー」と思っていたが、全く問題なかった。
何なら翌週に残り8冊大人買いした。
この作品で注目して欲しいポイントとして「音」と「継続」を挙げたい。
「音」はシンプルにその描写。
擬音の描き文字や効果線、コマ割りだけでなく、奏者の汗や楽器の動き、聴衆の態度から音が聞こえてくる。
ジャズの曲名や有名なジャズプレイヤーの名前ももちろん出てくるが、蘊蓄を垂れるタイプのマンガじゃないので中途半端な知識でも十分楽しめた。
メンバーの信念や理想、意地やわがままがぶつかり合いながらも成長していく様は、まさしくインプロヴィゼーション(即興)、コール・アンド・レスポンス(掛け合い)、ソロパフォーマンス(独奏)を交えて作るジャズそのもの。
「ジャズって何だべ」という人はこのマンガから入るとグッと敷居が下がって良い。
今度は「継続」について。
作者が意識しているのかは不明なんだけれど、この作品は「継続の難しさ、偉大さ」を描いた物語だと思う。
お題がたまたまジャズだっただけで、他のものでも十分成り立つ芯がある。
継続するのって本当に難しくて、いくら信念があってもいくら努力しようとも中々できることではない。
ライフステージの変化で辞めていく人や、才能に限界を感じて辞める人、やりたくてもできない人など、色んな理由で継続できない人が描かれていて(しかもこれが結構リアルでギクッとする人もいるだろう)、何かに本気で打ち込んだことのある人、そしてそれに挫折した経験がある人ほど突き刺さる作品だと思う。
本作では大は「ブルージャイアント(世界一輝くジャズプレイヤーを青色巨星に例えている)」にはならないんだけれど(10巻以降は『BLUE GIANT SUPREME』に続く)、毎回単行本の合間や巻末に数十年後の登場人物が「あいつはすごいんだ」と当時の大を語るシーンが描かれていて、継続先にある成功した未来を少しずつ見せてくれる演出も上手い。
また、こういう技能を突き詰めていく系のマンガにありがちな「意識高い」視点に陥らず、下手くそでも楽しもうぜ!と背中を押してくれるシーンもあり、暑苦しくならないのも良い。
もっと作品を楽しむために
読んだら熱が冷めないうちにジャズを聴け!
もうこれに尽きる。
曲をかけながら読むと深く世界観に浸かれるので、一度騙されたと思って試してみてほしい。
コンピレーションアルバムも出てるので、ちょっと紹介。
UNIVERSAL MUSIC JAPANの特設ページにあと数本動画があるので気になる人はリンク先も併せてどうぞ。
それから、上記の『BLUE GIANT SUPREME』は純粋な続編で、舞台をヨーロッパに移して世界に羽ばたいていく大の姿が描かれていてこちらも熱い展開。
本作が気に入った人は是非とも最新刊まで追いかけてほしい。