作品紹介
動画出典:Zaz Official
作品情報
Champs Élysées
アーティスト:
・ZAZ
リリース:
・2014年
アルバム:
・3rdスタジオアルバム "Paris"
アーティスト情報
ZAZ(ザーズ)
本名はIsabelle Geffroy(イザベラ・ジュフロワ)。
1980年、フランスのアンドル=エ=ロワール県出身。
5歳の時に地元の音楽学校に入学、11歳までに音楽理論、バイオリン、ピアノ、ギター、合唱を学ぶ。
2000年に地域評議会からの奨学金を得て、ボルドーのCIAM(Centre d’Information et d’Activités Musicales/音楽活動のための情報センター)に入学。
2001年からブルースバンド Fifty Fingers(フィフティー・フィンガーズ)にボーカルとして参加して以降、数々の音楽グループでボーカルを務める、2006年にパリに渡る。
その後ピアノバーやストリートで歌い続け、2010年に「ハスキーボイスの歌い手」を探していた音楽プロデューサー、Kerredine Soltani(ケレディン・ソルタニ)の募集広告に応募したのがきっかけでデビューを果たす。
レビュー
感想
僕はこの方、全くノーマークだったんだけれど中高時代の後輩に曲を紹介してもらって、すっかり気に入ってしまった。
スウィング感のあるパワフルで伸びのある歌声が気持ちいい。
あの曲がこんなに格好良くなるなんて!
この曲は色んな人に歌われていて(詳しくは後述)、僕の中ではJoe Dassin(ジョー・ダッサン)の歌う"Les Champs-Elysées"が一番だったのだけれど、これはなかなか。
動画出典:joedassinVEVO
この曲が収録されているアルバムの制作にはなんとQuincy Jones(クインシー・ジョーンズ)が関わっているらしく、ビックリして調べたらこの人、2011年にEuropean Border Breakers Awards(EBBA/ヨーロッパ・ボーダー・ブレーカーズ賞)受賞、ドイツの音楽賞Echo(エコー賞)で2011年にNewcomer des Jahres (international)、2012年にInternational Rock / Popの部門でそれぞれ受賞、そのほかにもフランス、カナダでも多数受賞していて国際的に成功している人物らしい。
パリ、そして偉大なミュージシャン(エディット・ピアフ、エラ・フィッツジェラルド、フランク・シナトラ、イブ・モンタンなど)へのオマージュ作品となっている。
ちなみにこのアルバム名、"Paris"というだけあって、収録曲は郷土愛や文化へのリスペクトが感じられるものばかり。
僕はこのアルバムでは"Paris sera toujours Paris"という曲も軽快なリズムが楽しくてお気に入りなんだけど、歌詞の内容を知ってびっくりした。
「パリはいつだってパリ」という意味のタイトルなんだけど、原曲が発表されたのが1939年。
ナチス・ドイツにフランスが占領されていた時代。
「どんなひどいことがあってもパリはいつだってパリ」と明るく歌い飛ばしてしまう力強さよ!
改めて音楽の力を感じてしまうよなぁ。
動画出典:Zaz Official
もっと作品を楽しむために
この曲、いかにもフレンチポップスとかシャンソンのイメージだけれど、実はイギリスで作られた曲。
1968年に発表されたJason Crest(ジェイソン・クレスト)というサイケデリック・バンドの4thシングル"Waterloo Road"が原曲。
彼らのプロデューサーがメンバーの作曲の能力に限界を感じて外注して作った曲らしい。
作詞はThe Jugular Vein(ザ・ジャグラー・ベイン)のMike Deighan(マイク・ディーガン)、作曲はTHE FOUR PENNIES(ザ・フォー・ペニーズ)のMike Wilsh(マイク・ウィルシュ)。
元々はほのぼのとした牧歌的な曲調だった。
これを、たまたまイギリスに滞在していたアメリカ生まれのフランス人歌手Joe Dassin(ジョー・ダッサン)が耳にして、シャンソン作詞家Pierre Delanoë(ピエール・デラノエ)に訳詞を発注。
舞台を「ワーテルロー通り」から「シャンゼリゼ通り」に移し、シャンソン風の"Les Champs-Elysees"が1969年に発表されるとこれが大ヒットする(曲は上に掲載したもの)。
ここから世界中で大量にカヴァー曲が発表される。
オランダ:Johnny & Rijk "Oh Waterlooplein"(1969)
デンマーク:Daimi "Champs Elysées"(1969)
クロアチア:Dragan Stojnić "Jelisejska Polja"(1970)
スロベニア:Majda Sepe "Šuštarski most"(1970)
ドイツ:Norbert & Die Feiglinge "Schönheits-Chirurgie"(1990)
etc...
1972年にイージーリスニング界の第一人者Raymond Lefèvre(レイモン・ルフェーブル)によるアレンジが発表されたのも世界的ヒットに拍車をかけた。
その国や歌手によってテンポが違ったり合いの手が入ったり、ちょっとずつ違って面白い。
日本ではモロッコ生まれのフランス人アイドル歌手Danièle Vidal(ダニエル・ビダル)が日本語で歌う『オー・シャンゼリゼ』を1971年に発表して人気曲に。
歌詞も原曲やジョー・ダッサンのものと大きく内容が変わらないので原曲の歌詞の雰囲気を知りたい人はこれ聴けば何となくイメージできるかも。
これを受けて日本でも越路吹雪やザ・ピーナッツ、南沙織、ピーター、岸洋子…とカヴァー曲が立て続けに発表される。
最近のだと奇妙礼太郎トラベルスイング楽団『オー・シャンゼリゼ』(2014年)とか。
このアレンジもなんだかクセになる。
動画出典:P-VINE, Inc.
イギリスで生まれた英語の曲をアメリカ生まれのフランス人がフランス語でアレンジして、モロッコ生まれのフランス人が日本語で歌って…。
補足
日本に『オー・シャンゼリゼ』を流行させたダニエル・ビダル、シャンソン歌手のCharles Aznavour(シャルル・アズナブール)にスカウトされたらしいのだが、今回紹介したザーズ、実は同曲が収録されているアルバム内で彼とコラボしているのだ。
曲名は"J'aime Paris au mois de mai"で、元々シャルルが1956年に歌っていたもの。
なんと下の動画の収録当時90歳とのことだが、すごくいい声。
途中でインタビューが入ってしまうが、こちらもお薦め。
動画出典:Charles Aznavour
最後にトリビアを一つ。
では。